綾瀬川の茶会 4

この茶会は鶴翁の茶風を表しています。

鶴翁の意図は、存亡をかけて対立していた人々を招き、茶会を開いて信頼の回復を図ることでした。

商取引の基本は信用です。江戸の酒問屋は浦賀奉行(※)の権力を背景として、諸国の酒造家を系列化(支配化)する策動をしていました。それは信用取引を権力で屈服させようとしたことです。

鶴翁は礼をつくすことにより、信頼の回復を図りました。これは浪華の人々の「粋」を表現した方法かもしれません。

なお、鶴翁はこの江戸滞在中、十一代将軍徳川家斉に献茶し、茶具一式と「清玩規」を献上しました。

天保九年(1838)十月千種有功卿を通じて、将軍家より献茶の嘉賞として蒔絵硯筥を下賜されました。

  ※浦賀奉行の役務は江戸湾に入る船舶の監視、積み荷の検査、民政裁判等です。