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目次

  1. 廬仝「七椀詩」
  2. 関係図
  3. 花月菴鶴翁年表
  4. 売茶翁の道具
  5. 煎茶花月菴流

 

1.廬仝「七椀詩」

原文
      「走筆謝孟諌議寄新茶」
日高丈五睡正濃       軍将打門驚周公
口云諌議送書信       白絹斜封三道印
開緘宛見諌議面       手閲月團三百片
聞道新年人山裏       蟄蟲驚動春風起
天子未嘗陽羨茶       百草不敢先開花
仁風暗結珠琲蕾       先春抽出黄金芽
摘鮮焙芳施封裏       至精至好且不奢
至尊之餘合王公       何事便到山人家
柴門反関無俗客       紗帽籠頭自煎喫
碧雲引風吹不断       白花浮光凝椀面
一椀喉吻潤         両椀破孤悶
三椀捜枯腸         唯有文字五千巻
四椀發軽汗         平生不平事尽向毛孔散
五椀肌骨清         六椀通仙霊
七椀喫不得也        唯覚両胱習習清風生
蓬莱山在何処        玉川子乗此清風欲帰去
山上群仙司下土         地位清高隔風雨
安得知百万億蒼生命       堕在顛崖受辛苦
便為諌議問蒼生       到頭還得蘇息否
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大意
  「筆を走らせて孟諌議の新茶を寄するを謝す」
日 高きこと一丈五尺にして 眠り まさに漬かりしに
軍将 門を打ちて 周公を驚かす
口に云う 諌議 書信を送り来たれり
白き絹 斜めに封じて 三道の印あり
緘を開くれば 宛ら諌議の面を見るが如し
手は月団三百片を閲たり
間道 新年に山裏に入れば
蟄蟲 驚き動き 春風起る
天子未だ陽羨の茶を嘗わざれば
百草敢えて先て花を開かざるなり
仁風 暗かに結ぶ 珠琲蕾
春に先んじて 抽き出す黄金の芽
鮮たるを摘み 芳を焙じ 施に封じ裹
至って精に 至って好けれども 且くも奢らず
至尊の余りは王公に合し
何事便山人の家にか到れる
柴の門 反って閉して俗客なし
紗帽頭を籠めて自ら煎じて喫す
碧雲は風を引いて吹き断まず
白き花 光を浮かべて椀面に凝る
一椀にて喉 吻潤う
二椀にて孤り悶えを破る
三椀にて枯腸を捜れば
唯だ文字五千巻有るのみ
四椀にて軽き汗を發し
平生 不平なる事 尽く毛孔に向つて散ず
五椀にて肌骨清く
六椀にて仙霊に通ず
七椀にて喫するを得ず
唯覚ゆ両腋に習習として清風の生ずるを
蓬莱山は何れの処にか在る
玉川子は此の清風に乗りて帰り去らんと欲す
山上の群仙 下土を司るも
地位 清く 高く 雨や風より隔たる
如何に知るや百万億の人民の命の
堕ちて顛崖に在りて 辛苦を受くるを
便 諌議と為りて蒼生に問う
到頭 還た息を蘇きかえすこと 得たりや否や
               龍 愁麗 『「中国茶辞典」 廬仝「七椀詩」について』より  

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