戎鯛

田中屋の銘柄は「浪華清水」「菊之清水」「鶴」「戎鯛」です。

文政六年(1823)の「続浪華郷友録」によれば、銘柄はかつて「浪華清水」であったが、以後は「菊之清水」にしたことが記述されています。

また「鶴」については文政七年(1824)、花月菴を訪れた頼山陽が次のように記述しています。「余が酒戸(量)の進むこと、この酒(鶴)より始まる」(「頼山陽全傳」)。

戎鯛看板(花月菴蔵)「戎鯛」は文化元年(1804)に西宮の真宣屋喜平次から1,750石株を買い取った銘柄です。「戎鯛」の看板が花月菴に現存しています。

この看板では「西宮 田中新右衛門」と記載されています。これは田中屋の醸造場所が大阪と西宮にあったことが推測されます。そして田中屋は大坂の伝統的な足踏み精米と、西宮の河川を利用した水車精米を擁していたことが推測されます。

また、「売方一手」として「中井新右衛門」が記載されています。中井屋が新たに看板を制作したことは、田中屋の地元酒問屋が中井屋かもしれません。

「戎鯛」は江戸向けにも販売されていました。

文化五年(1808)、大坂酒造仲間の総会に真宣屋喜平次の名前があります。この総会では江戸向け船積みの調整をすることが決議されています。